デニムミニの少女

MiniActive > バーチャル > デニムミニの少女 > part.19

* スタン

「おい、お前ら、急いでこの女たちを縛れ。
 もうすぐ警察が来るとこの女が言ってた」
地面に這いつくばっていた黄色いシャツの男は、美那子の右足首と九条の左足首を握りしめたまま、他の男たちに命令した。
美那子も九条も体に力がいっさい入らず、指先を動かすことすらできずに、地面に倒れていた。
なぜ体に力が入らないのかは謎だったが、黄色いシャツの男に足首をつかまれたとたんに体の力が抜けてしまったことを考えると、足首をつかんでいる黄色いシャツの男が、美那子と九条の力を吸い取っているかのようにも思われた。
黄色いシャツの男に命令されるままに、他の男たちは工場内のどこかから太めのロープを持ってきた。
そして、まったく力が出ず抵抗できない美那子と九条の上半身を起こし、ふたりの腕を背中側にまわして、両手首をロープできつく縛った。
「目が覚めるとやっかいだから女子高生も縛っておけよ」
黄色いシャツの男が言った。
どうやらこの男がリーダー格のようだと美那子は思った。
「縛ったらおれのバンに女たちを運べ」
そう言う黄色いシャツの男に、他の四人のうちの白いシャツの男が尋ねた。
「おい、スタン、女を三人とも運ぶのか?
 扱いが大変じゃないか?」
あだ名なのか何なのかはわからなかったが、黄色いシャツの男はスタンと呼ばれているようだった。
スタンはまだ這いつくばって美那子と九条の足首を握ったまま、不機嫌そうに返事をした。
「おれたちの顔を見た人間をここに残してくってのか?
 警察にいろいろ話されてもいいのか?」
尋ねた白いシャツの男は無言のままくるりと向きを変え、作業台の上に横たわるラナの体を片手で軽々と持ち上げて、自分の肩に乗せた。
スタンは握っていた九条の足首を手放し、その九条の体を別の男がまた片手で軽々と持ち上げて肩の上に乗せた。
男にかかえられた九条は思った。
<こいつは怪力の能力を持つ感染者に違いないわ…>
九条をかかえた男は黒のポロシャツを着ていた。
スタンは美那子の足首だけは放さずに、体を起こしながら言った。
「このカンフー女は、念のためおれが運ぶ。
 この女が解放者じゃないのは確かだが、さっき俺たちにした攻撃は人間技とは思えない。
 両手を縛ったとはいえ、ひょっとしたらおれが手を放したとたんにまた暴れ出す可能性がある」
それを聞いて美那子と九条は同じことを考えた。
<やはりこのスタンという男につかまれると体の力がすべて抜けてしまう?
 それがこの男がラテスケンス感染で得た能力?>
九条はいつの間にか自分の体に力が戻っているのを感じた。
縛られていない脚は自由に動かせるようになっていたのだ。
<やはりそうだ。あのスタンという男が手を放してからしばらくすると、体が動くようになった…>
スタンは立ち上がって、まだぐったりとしたままの美那子の体を持ち上げ、肩の上に乗せた。
スタンは肩の上に乗せた美那子のわきの下から顔を出し、片手を美那子の脚の間に入れ、その手のひらはしっかりと美那子の太ももをつかんでいた。
首を上げてそれを見た九条は、美那子がまだスタンにつかまれていることがもどかしかった。
<白神さんは怪力が出せるハーフトップを着ているから、あのスタンという男が手を放しさえすれば、手首を縛ったロープなんか引きちぎって反撃できるはずなのに…>
九条の考えるとおり、美那子はスタンにふとももをつかまれ、いまだに全身の力がすべて抜けている状態だった。
男たちは美那子、九条、ラナの三人をかついだまま工場の建物を出て、敷地内にとめてあった白いバンのところまで来ると、バックドアを開けて九条とラナを車の中におろした。
バックドアから黒いポロシャツの男も車の後部に乗り込んだ。
美那子はセンタードアから車の中に入れられ、その隣りにスタンが座り、美那子の腕を握り続けていた。
美那子の反対側の席には白いシャツの男が座り、美那子はふたりの男にはさまれた状態となった。
あとのふたりの男はそれぞれ、運転席と助手席に乗り込み、車のすべてのドアが閉められると、すぐに車は発進した。
「『第二工場』へ行け」
スタンが命令し、五人の男と三人の女を乗せたバンは薄暗い道路をかなりのスピードで進んで行った。
あとにした工場に向かっているだろうと思われるパトカーの姿は、まだ見えなかった。

揺れる車の中で、九条は自分の横に寝かされたセーラー服の女子高生の様子を見ていた。
生きているのは確かだが、いっこうに目覚める気配がない。
早く病院に運ばないと手遅れになる状態などではないことを祈りながら、九条は今度は、ひとつ前の席に男たちに挟まれて座らされている美那子の方を確認しようとした。
しかし、寝かされている九条からは座席の背もたれが邪魔をして美那子の姿を見ることはできなかった。
美那子が反撃できていないことから、スタンという男が美那子の特殊能力を警戒し、美那子の体のどこかをつかんで全身の力を奪ったままでいることは間違いないと思った。
しかも最悪なことに、ときおり美那子の両側に座る男たちから「気持ちいい」「最高」といった声が聞こえてきたことで、抵抗できない状態の美那子が両側から体のどこかを触られ続けていることが、容易に想像できた。
そうこうするうちに、車は停車した。

車のバックドアが開けられ、外の景色が見えると、またさっきとは違う工場の敷地にいることが九条にわかった。
すぐに美那子、九条、ラナの三人は、しばられたまま工場の事務所と思われる建物に運び込まれた。
男たちは事務所の来客用のソファーに九条とラナを座らせたが、スタンという男は美那子を肩にかついだまま、美那子の腰のあたりや太ももをなで続けていた。
美那子に意識はあったが、スタンに体をつかまれている限り、少しも体を動かせないようだった。
背中側で手首をしばられたままソファーに座らされている九条は、どうにか脱出のチャンスはないものかと静かに辺りをうかがっていた。
そのとき突然、九条のとなりで気を失っていた青島ラナが、大声を上げた。
「何だ、おまえら!」
セーラー服の女子高生が突然目覚めて発した乱暴な調子のことばに、その場の男たちは全員驚いた。
「おまえら、おれを殴りやがったな!変なことしたら許さねえぞ!」
後ろ手に縛られているにもかかわらず威勢のいいラナのことばは続き、男たちのリーダーのスタンもこれにはあっけにとられたようだった。
誰かが何かを言う前に、再びラナの大声が響いた。
「あ!美那子先輩!」
ラナはそう言うが早いか、ソファーから飛び跳ねて起き上がったが、すぐ横にいた二人の男がラナを押さえつけてふたたびソファーに座らせた。
「くそう、放しやがれ、手首がいてえ!それに美那子先輩を汚い手で触るな!」
押さえつけられてもラナのことばは止まらず、これにはとなりの九条も圧倒されてしまった。
しかし、ラナの意識が戻って元気そうなことに関しては、少し安心したのだった。
「ひどくガラの悪い女だな」
スタンがようやく感想を口にした。
男たちに押さえつけられながらもまだ暴れ続けようとしているラナの方にスタンは近づき、美那子をかついでない方の手で、ラナの肩をつかんだ。
やはりスタンにつかまれたラナは全身の力を奪われたらしく、とたんに動かなくなった。
スタンは白いシャツの男に向かって言った。
「確かにお前の言ったとおり、女三人じゃあ、扱いが大変だな」
白いシャツの男はスタンの方に顔を向けたが何も言わなかった。
続けてスタンは言った。
「ソファーの女二人はお前らが適当に楽しんだら、夜のうちに『本部』に運んでおけ。
 このミニスカートちゃんはここで朝まで楽しませてもらってからおれが本部に運ぶ」
そのことばに、他の四人の男たちはやや不服そうな面持ちだったが、どうやらスタンに歯向かうことは誰にもできないようだった。
男たちの誰かが小さくつぶやいた。
「まあ、三人とも美形だからいいけどさ…」

美那子をかついだスタンは、他の男たちを残し、事務所のさらに奥の部屋に足を踏み入れた。
部屋は六畳ほどで、中央にビリヤード台のような緑色の台が設置されていた。
だが、隅にポケットがついていないのでビリヤード台ではないことは確かだった。
そして、その台の四隅には手かせや足かせのような拘束具がとりつけられているのが見えて、美那子はこれはもしかして拷問用の台ではないかと思った。
さらに部屋の壁には野球のバットとグローブなどが飾られており、仕事用というよりは趣味のための部屋だと感じさせるものがあった。
「朝まで楽しもうね、ミニスカートちゃん」
スタンはかついでいた美那子を緑の台の上におろすと、美那子の両手首を頭側の両側の拘束具にそれぞれつないだ。
スタンはにやにやと笑いながらしゃべり続けた。
「次に足をつながれると思ってるかな?…甘いね。」
いきなりスタンは美那子の両足首をつかむと、思いっきり開脚させた。
スタンにつかまれて力がまったく出せない美那子には抵抗するすべはなかった。
「出しゃばりミニスカートちゃんにはこうすべき。
 さっきいきなり工場に入ってきた勇気は認めるが、捕まってしまえばこういう運命さ…」
スタンはそう言うと開かれた美那子の太ももの間の白い布に、顔を近づけて舌を出した。
そのとき、となりの部屋から青島ラナのかん高い声が響いてきた。
「ぎゃあああ、やめろ、おまえら、殺すぞ!」
スタンは動きを止め、ため息をついた。
そしてつぶやくように美那子に、
「ちょっと待ってろよミニスカートちゃん」
と言うと、ドアの方に歩いていき、大声でどなった。
「やっぱりそいつはすぐ本部に連れていけ!
 うるさすぎる!」
それは美那子の体からスタンの手がはなれた久しぶりの瞬間だった。
スタンはすぐには戻って来ず、年上の女(おそらく九条のことだろう)はどうするかというような話を他の男たちとしているようだった。
スタンの手が美那子の体からはなれて30秒以上が経過した。
美那子は自分の体が動かせるようになっていることに気づいた。
《またあの男に体をつかまれたら体を動かせなくなる…》
美那子はすぐに両手首の拘束を引きちぎって起き上がった。
ラテスケンスの白いハーフトップの力が発揮されたのだった。
そして、手首にまとわりつく手かせを両手ともはぎとると、ケレールの速度とフォルティスの力も自分の体に戻ってきたことを感じることができた。
《今の私のスピードならあのスタンという男につかまれることはまずない。でも、もしつかまれたら今度は逃げ出すチャンスはないかもしれない…》
美那子は部屋の隅の事務机の上に、強力な接着剤が置いてあるのに目をとめた。
そして次に壁に飾ってある野球のバットを見つめた。
スタンがとなりの部屋から戻ってきたのは、それからさらに一分もたってからだった。

部屋のドアを閉めるなり、スタンは台の上に美那子がいないことに気づき、
「おや?」
と声を上げた。
スタンが緑の台に近づくと、台の反対側のかげから美那子が飛び出し、スタンに向かって野球のバットを振り下ろした。
ケレールの超スピードを持つ美那子の攻撃をスタンがかわせるはずもなく、バットはスタンの頭に直撃した。
スタンは短い叫び声を上げて床に倒れこみ、頭をかかえた。
フォルティスの怪力を持つ美那子が全力で殴ったのであればスタンは一撃で気を失っていたであろうが、理由があって美那子は力をすこし弱めて殴っていた。
「ふたりをどこかよその場所につれていった音が聞こえました。
 その場所を教えてもらいます」
美那子が強い口調で言うと、スタンは床の上でもだえながらも、怒りのことばを発した。
「この女、よくもやりやがったな!またお前をつかんで台の上にはりつけてやる!」
美那子は手に持っていたバットをスタンに投げつけた。
スタンはあやういところでそれを両手でキャッチし、
「危ねえじゃねえか」
と再び大声を上げた。
しかし、心の中では、こう思っていた。
《この女はほかの女を助けにいく場所を知るために、おれに手加減をしている…。
 そこに隙ができることに気づいていない!
 またこの女の体のどこかをつかんでやる》
スタンは起き上がるためにバットを手放そうとしたが、両手のひらがバットにくっついてはなれなかった。
「なんだ?」
驚いたスタンが美那子の方を見ると、美那子が手に接着剤の缶を持ち、それを少し振りながら言った。
「そのバットにこの強力接着剤を塗っておきました。
 もうあなたが私をつかむことはできません。
 はやくふたりの居場所を教えてください」
スタンは目の前の少女に敗北したのだと感じた。
「ふん、なかなかやるじゃないか。ただ美人でミニスカートちゃんってだけじゃないんだな…」
つぶやいたスタンは倒れたまま、腕を組んで立っている美那子を見上げていた。
その目は悔しそうに、朝まで自分の自由にできるはずだった太ももとスカートの中の影に焦点を合わせていた。

(つづく)